2008年5月の日記


2008年5月5日(

 またしても、新しいアルバイトが入りました。

 今月に入って、もう3人目。

 豊作ですね。

 その、新人アルバイトの、湯沢さん(仮名、22歳・男)。
 確かに新人ではあるんですが、実は、新人ではないんです。

 なんでも、2年くらい前に、この、パチプロ辞職店で、働いていたことがあるらしいんです。
 その関係で、高津さんや斉藤さんや島田さんとは、旧知の仲であるそうです。

 店長の指示を受けた私。そんな、出戻り娘な湯沢さんに、レジの打ち方を、教えて差し上げました。
 2年間のブランクを考慮に入れ、初心者に教えるのとおんなじつもりで、じっくりと、教えました。彼自身も、それを希望していましたからね。

 先輩じゃないくせに、先輩気取りの、私の指導。
 湯沢さんは、終始、静かに、耳を傾けてくれていました。

 ひと通り教え終えたら、すぐに彼を、メインのレジ打ちとして、起用。
 早速、試練を与えたのです。

 ところが、この試練、ちっとも、試練になっていやしませんでした。

 やはり、経験者は、違います。少しも臆することなく、ほとんど戸惑うこともなく、普通に、レジを打っていたのです。
 私が初めてレジに入った時とは、エラい違いでした。

 疑問が残る、ところですね。

 じっくりと時間をかけて教える必要が、果たして、あったのか。

 1時間半もかける必要が、あったのか。


2008年5月6日(

 今日と明日は、お仕事がお休み。

 そんな、連休初日の今日。私は、自分の部屋から、一歩も出ませんでした。

 ずっと、引きこもって、寝たり起きたりしていました。

 これで、いいんです。

 世間一般では、今日までが、ゴールデンウィーク。
 こんな、混雑極まる時期に、外に出かけるなど、愚の骨頂。

 そう考えて、わざと、外に出なかったのです。

 決して、心がナマケモノになっていたわけではありません。
 ありませんとも!

 たぶん、ありませんとも!


2008年5月7日(水)

 2連休の、2日目。

 昨日とは打って変わって、いろんなことを、やりましたよ。

 銀行に、公共料金の支払いに行ったり。
 銀行の向かいにある某スーパーに、自主的に、雑貨の売価調査に行ったり。
 古巣に買い物に行き、磯部副店長に挨拶したり。
 買い物ついでに、こっそり、古巣のほうの売価調査もしたり。
 ラスボス本店にも買い物に行き、次々に出会った、三原さん・加治副店長・中村さん・高橋さん(女)・田中さん・赤木さん・片寄さんらと、軽く雑談したり。
 いつもの理髪店・「すざき」に、髪を切ってもらいに行ったり。

 充実した休日が、過ごせましたです、はい。

 昨日、じっと力を蓄えていた甲斐が、あったというものですね。


2008年5月8日(木)

 店頭にある、ゴミ箱。毎晩、中のゴミ袋を、交換します。
 ゴミが一杯に詰まった、古いゴミ袋は、店の裏口付近にある、ゴミ置き場へ。
 そこに置いておけば、もれなく翌朝、業者さんが、回収しに来てくれるのです。

 その、ゴミ袋交換作業。今日は、私が、やりました。

 交換を終え、ゴミで満杯の袋を両手に抱え、店内に入ったら、川名店長に、呼び止められました。

 店長:「そんなもん持って、なんで中に入ってくるんだよ(笑)」
 私:「え?」
 店長:「外から回って、裏まで行けば良くねえ?」
 私:「そうっすね。言われてみれば、確かにその通りですね
 店長:「お前、この前も同じことやって、ゴミ袋から床にコーヒーの汁垂らして、俺に怒られただろ
 私:「そういえば、そんなこともありましたね
 店長:「その時に、ちゃんと学習しろよ」
 私:「はい。すいません。次回からは、外から回ります」
 店長:「大体、そんなもん持って店内をうろつくの、おかしいだろ。どう考えても、外から行ったほうが良くねえ?」
 私:「おかしいですね、確かに(笑) 外から回るべきですよね。全然、思いつきませんでしたよ。さすがは店長。頭いいですね
 店長:「頭良くねえよ。お前が、若いくせに頭固いだけだよ」

 店長、あなた、少し、誤解をしています。

 私はそれほど、“頭が固い”わけじゃないんです。

 “頭が悪い”だけなんです。


2008年5月9日(金)

 早番。夜の6時に仕事を終えた後の、休憩室。またもや、休憩中の上野副店長と、話し込んでしまいました。

 副店長に、「なんで、同期の中に、何人も、同じ大学の人がいるのか。みんなで示し合わせて、ラスボスに来ることにしたのか」と、質問してみたら、彼は、「そうではない」と。
 同期に、同じ大学の人がいるのは、完全に偶然であるそうなのです。しかも、長岡さん以外の2人とは、学生時代には、知り合いではなかったそうなのです。
 ちょっと、意外でした。こういう偶然って、あるものなんですね。

 その後副店長は、長岡さんについて、語り始めました。

 副店長:「長岡さん、昔はすっげえ可愛かったんだよ」
 私:「え? 今は違うんですか?(笑)」
 副店長:「いや、そうじゃないけどさ(笑) でもなんか、この前本部に行った時に、久しぶりに会ったんだけど、なんか、変わったな〜って思って
 私:「へえ〜(笑)」
 副店長:「でも、ホントに昔は可愛かったんだよ。すっげえおっぱい大きくてさ
 私:「なるほど(笑) では、今度俺が本部に行った時に、長岡さんに、その辺の一連の話をまとめて……
 副店長:「やめろよ!(笑)」

 やがて話題は、副店長の同期の女性陣、全体に波及。
 彼は、こんなことを、言いました。

「俺の代は女の子が多かったんだけど、みんな、嫁さん候補って言われてたんだ。美人が多くてさ。……藤久みたいなヤバいのは、一人もいなかったよ

 副店長。結局最後は、同期でも何でもない藤久さんを、オチに持ってくるわけですか。

 副店長との楽しい会話を終えて、帰宅した私。私服に着替え、しばしくつろいだ後、今度は、本部へと向かいます。
 決して、長岡さんに、チクりに行ったわけではありませんよ。書類を届けに行ったのです。

 本部での用を済ませたら、次は、閉店時間も近い本店にて、お買い物。
 お菓子やお酒を買った後、事務所に、顔を出します。

 そこで、仕事中の逸見さん&斉藤さんと、パチプロ辞職店のことなど話しつつ、迎えた閉店後。
 いよいよ、やってきました。高橋さん(女)が、持ってきてくれました。

 そうです。お弁当の、残りです。

 私は、これを待っていたのです。

 喜び勇んで、品定め。気に入ったやつを、我が物とさせていただきました。

 良かったです。
 こんな時間から、自力で飯を作るのは、面倒ですからね。

 かといって、外食をする気にも、到底なれませんでしたし。

 なんたって、ラスボス本店での買い物を終えた時点で、財布の中身が、812円しかなかったもんでね。


2008年5月10日(

 午後3時半。出勤して間もない私。早番である副店長に、疲れた顔で、言われてしまいました。

昨日の夜、ずーっとニコニコ動画観てたから、眠い……

 おーい。
 新婚さん、何やってんの。


2008年5月11日(

 3月までパチプロ辞職店でバイトしていた、大石さん。
 彼女、本日付けで、復帰いたしました。

 高校卒業を機に、ウチでのバイトを辞め、4月からは、よその街の大学に進学。当初は、学校の近くで、新しいバイトを探していたそうなのですが、やっぱり気が変わり、地元でバイトすることに。それならば、この前まで働いていたラスボスに戻ればいいだろうと考え、舞い戻ってきたのだそうです。

 これじゃあ、何のために一旦辞めたんだか、分かりゃあしませんが、バイトが増えるのは、ありがたいこと。

 今月は、本当に、大豊作ですね。

 そんな、豊作アルバイトの一人である、山口さん。
 今日は私、副店長に頼まれ、彼に、レジの打ち方を、授けました。

 ザーッと教え終えたらば、すぐさま実戦投入。
 実際にお客様を相手に、レジでの取引を、行ってもらいます。

 いやあ。私、ずっと、近くで見守っていたのですが、結構、緊張している様子でしたよ。
 レジ初体験ですからね。ぎこちなかったです。

 まあ、私が初めてレジに入った時と比べれば、相当マトモだったとは思いますが。

 夜9時過ぎ。店長の指示を受け、私、店内の蛍光灯を、1ヶ所、交換することになりました。
 天井の蛍光灯に、切れているやつが、あったのです。

 しかしながら、この交換作業、私には、できませんでした。

 脚立と、新品の蛍光灯を持ち、現場に急行。脚立を組み立てたまではいいものの、その、肝心の脚立に、途中までしか、登れなかったのです。

 いや、あの……。

 怖くって。

 4回ほどトライしましたが、どうしても、ダメ。
 これはもう仕方がないと、私、腹をくくり、店長のもとへと駆けていきました。

 そしてそこで、
「店長。自分、高いとこ怖いんで、蛍光灯換えるの、無理でした
 と、緊急報告

 店長は、呆れながらも、私が挫折した場所まで歩いていき、本来私がやるべきだった作業を、代わりに、やってくれました。

 ありがとうございます。ほっとしました。

 怒られたって、みっともなくたって、いいんです。

 私、高い所に登るのだけは、絶対に、嫌なんです。

 さてさて。その後のこと。休憩室にて、こんな会話が、交わされました。

 店長:「高い所、そんなに怖いの?」
 私:「はい。怖いんっすよ。ほんっとに、怖いんすよ
 店長:「そんなんじゃ、女の子にダサいって言われるぞ〜。彼女できないぞ〜」
 私:「ハハハハハ」
 店長:「よし。じゃあ、今度俺が、藤久さんでも紹介してやろうか?(笑)
 私:「わざわざ紹介してくれなくても、もう知ってますよ(笑) 知ってる人紹介されても、意味ないじゃないですか(笑)」
 店長:「いや、あるかもしれないじゃん。俺がキューピッドになって、藤久にそれとなく伝えといてやるよ。『……なんか、樫木が、好きらしいよ』って」
 私:「メチャクチャ、ストレートじゃないっすか!(笑)

 店長ってば。
 あなたはそんなに、私を、退社に追い込みたいんですか?


2008年5月12日(月)

 お休み。
 夜、ラスボス本店に、買い物に行きました。

 そこで私、あるはずのない商品が陳列されているのを、発見してしまいました。

 ライダーチップスRの、第5記録です。

 ……なぜだ!?

 今までの流れからいって、第5記録の発売は、今年の秋だと思っていたのに。
 勝手に、そう思い込んでいたのに。

 おのれショッカーめ、謀ったな!

 ライダーチップスは1つも買わずに、ラスボスでの買い物を終えた、恥ずかしがり屋の私。帰宅後、パソコンを起動します。

 カルビーのホームページを覗いて、調査。
 第5記録は、4月30日に、発売された模様。

 くそっ。もう、先月の話じゃないか。

 続いて、アマゾンに、アクセス。
 ライダーカードRの、第5記録のBOXを1ケースと、オフィシャルカードバインダーとを、注文します。

 よし。今日のところは、これでOK。

 思わぬ奇襲を受け、だいぶ遅れをとってしまいましたが、まだまだ十分、巻き返せます。

 首を洗って待っていろよ、ショッカー!


2008年5月13日(火)

 閉店業務を終え、休憩室に入ったら、川島さんと岸さんが、アイスキャンディーを食べながら、くつろいでいました。

 ピンと来てしまった、私。彼らに尋ねてみると、案の定。

 そのアイスキャンディーは、休憩室の冷凍庫内にあったやつ。
 本日お休みの、大場さんの、ものでした。

「樫木さんも、一本どうですか?」

 と、岸さんに勧められるままに、私も、冷凍庫のドアをオープン。
 数本あるアイスキャンディーのうちの一本に、手を伸ばします。

じゃあ、いただくことにするよ

 などと、言いながら。

 すまない。大場さん。
 ちょうど、冷たいものが、食べたい気分だったんだ。

 でも、今回は、大丈夫。
 何本かあったうちの、1本しか、食べていないから。

 だから、だから……。

 君にはバレないと思うのさ。


2008年5月14日(水)

 今日は、仕事がお休み。
 古巣ラスボスタウン店に、行ってきました。

 そこで、平林店長をとっ捕まえ、事情を説明します。
 卑劣な奇襲攻撃を受けてしまったという、事情を。

 そして彼に、品物を、注文。
 ライダーチップス第5記録を、2ケース、お願いします。

 平林店長は、快く、引き受けてくださいました。

「ウチとしても、これは大口の取引だから。ポテトチップスをこんなに買ってくれる人、いねえから(笑)

 と、快く。

 ありがとうございます、店長。
 これで、ショッカーに、一泡吹かせてやることができそうです。

 しかし店長。
 「ポテトチップスを沢山求めてくれる人」ならば、私以外にも、いるでしょう。いたでしょう。

 ほら、あの、ビッグサイズのポテチを、大量に取り置き依頼してくる人ですよ。

 まあ、あの人は、買ってはくれないわけですが。


2008年5月15日(木)

 新人アルバイトの一人である、大月さん。
 5月4日の出勤を最後に、出勤していません。

 出勤すべき日が、なかったわけじゃないんです。
 5月5日から今日までの間に、7日ほど、あったんです。

 だけれども、1日も、出ていないんです。

 毎回、「今日は体調が悪いので休みます」という電話を、元気な声でかけてきて、休んでしまうんです。

 これはどう見ても、サボッているだけ。このまま二度と来ることなく、フェードアウトしていくに違いありません。
 店長と副店長も、そう、予想しています。

 そんな状況を、悲しみつつも、ちょっとおもしろがって、私、事務所で川名店長に、話を振ってみました。

 私:「大月君、明日こそは、来るといいですね」
 店長:「来ねえだろ。もう、来なくていいよ
 私:「いやいや(笑) 来るといいですね」
 店長:「来なくていいよ

 ダメだ。
 大月さん、完全に見限られとる。


2008年5月16日(金)

 昨日の、私と店長の会話を、知ってか知らずか。まあ、知らないでしょうが。
 大月さん、出勤してきました。普通に、出勤してきました。

 私たちの悪しき予想は、はずれ。実に、結構なことです。

 さて。今日は、拙者が彼に、レジの打ち方を、伝授します。
 彼は、4日にも、黄さんから、レジの打ち方を教わっていますが、まだ、実際に、お客様相手の取引をしたことは、ありません。
 しかも、前回教わってから、ずいぶん間が空いてしまっており、せっかく仕入れたレジの知識も、すでに、忘却の彼方に消え去ってしまっているとのこと。

 そんなわけで、私が、もう一度、教え直すことになったのです。

 そうしてひと通り教えた後は、例によって、すぐに実戦投入。
 大変不安がる彼に、
「大丈夫。俺がすぐ隣にいるから。『戸惑ってるな』って思ったら、すぐにフォローするから。『二人でレジをやってる』って思ってくれて、構わないから」
 と、優しく先輩風を浴びせかけ、どうにかこうにか、舞台へと引っぱり上げます。

 有言実行。私、わずか15分ほどの、大月さんのレジ初陣を、ずっと隣で見守り、必要に応じてサポートしていたのですが、あれでした。

 彼、かなりガチガチで、それ以上に、ズタボロな感じでした。

 合計支払い金額が674円だったお客様に、お釣りとして、674円を渡そうとする一幕なんかも、ありましたからね。

 ドンマイ。明日から、また頑張ろう。

 ところで。本日、実家の母から、メールがありました。
 「アマゾンから荷物が届いた」という内容の、メールでした。

 めでたいことじゃ。
 これで、ショッカーに対して、攻勢に転ずることができます。


2008年5月17日(

 午後、起床した時点で、すでに体が、だいぶ疲れていました。

 何が原因なのかは、よーく、分かっています。

 昨晩、遅ーく遅くに、テレビでやっていた、映画・『ホット・ショット』。
 これを、観てしまったためです。

 あの映画、なんとも疲れる映画だったのです。

 分かりにくいかもしれませんが、これ、一応、褒めてます。


2008年5月18日(

 閉店業務も終わった、夜11時45分ごろ。帰る間際の休憩室。
 川名店長が、私に手のひらを突き出し、こう、求めてきました。

「俺、もうすぐ誕生日なんだよ。なんかくれよ(笑) なんかくれよ(笑)

 なるほど。日付が変われば、店長の誕生日なのですか。

 私は、すかさず、機転を利かせました。
 テーブルの上にあった、500mlペットボトル。誰のものとも分からない飲みかけのお茶を手に取り、店長に差し出したのです。

「あ。じゃあ、これ……」

 なんという、上司思いな部下でしょう。

 店長は、私の手にある誕生日プレゼントを見るなり、言いましたよ。

「はあ!? それ、俺んだよ!


2008年5月19日(月)

 アマゾンに頼んだ品は届きましたが、古巣に頼んだ品は、まだ。
 入荷の吉報が、待ち切れない私。仕事がお休みの今日、古巣ラスボスタウン店に、顔を出してみることにしました。

 もしかしたら、もう届いているかも。
 平林店長が、私に連絡を入れるのを、忘れているだけかもしれませんからね。

 古巣に到着。店内で作業をしていた磯部副店長に声をかけ、ライダーチップスについて尋ねてみると、彼は、「たぶん、そんなものは届いていない」と。  だけれども、念のために、バックルームのほうへ、確認に走っていきます。
 しばらく経って戻ってきて、彼は私に、「やっぱり届いていない」と、報告。
 私は、肩を落とします。

 結構、届くまでに時間がかかりますね。

 あるいは、古巣に商品を運び入れるトラックが、ショッカーの襲撃を受けてしまったのかもしれません。

 ショッカー。どこまで卑劣な奴らなんだ!


2008年5月20日(火)

 午後5時前。出勤し、ユニフォームに着替えた島田さん。事務所の壁に貼ってある、シフト表を見るなり、

「あ。やべえ。今日俺、違った!

 すぐにユニフォームを脱ぎ、職場から去っていきました。

 彼、自分の出勤すべき日を、把握していなかったみたいなのです。

 終始、相変わらずのテンションの高さ。
 ただ、やって来てすぐに帰っただけなのに、ずいぶんとまあ、騒がしかったです。

 春の嵐。


2008年5月24日(

 夕方。店内にスズメバチが出現したので、私と上野副店長とで、退治しました。

 天井に止まっている、ハチ。そいつに私が、備品として卸した、虫捕り網を被せます。
 網を天井に押し当て、柄の部分をグニャッと曲げ、無理矢理、ハチ様を、網の中に閉じ込めます。

 こうして、天井から動けなくなった、スズメバチ。
 その哀れな昆虫に向け、副店長が、やはり備品として卸した、殺虫剤を、噴射します。

 プシュー、プシュー、プシュー。執拗に、必要以上に、プシュー。
 みるみるうちに、ハチさんは衰弱。

 私は、彼を網でクルッとくるんで、そのまま網を、床に置きます。

 それから私、近くにあった、衣料品陳列用の、ハンガーを手に。
 そいつでもって、瀕死のハチを、ボカスカと殴りつけます。

 やがて、ハチ公は絶命。

 我々の、完全勝利です。
 店内の平和は、守られました。

 ハチの亡骸を処分したら、私は、スピーディーに、休憩室へ。
 流しで、念入りに、手洗いうがいをします。

 ハチ戦の最中、副店長はずーっと、標的の斜め下にいました。
 だから、大丈夫だったのです。

 しかし私は、ハチさんの、真下にいました。

 天井から降り注ぐ殺虫剤の雨を、ずーっと、浴び続けていたのですよ。



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